写真とあそぶ2 「人間になりたかったにわとりのはなし」

ねえ、きみは何がしたいんだい?



わたしはね、空を飛びたいんだ。
うそ。
わたしはね、見た目はにわとりだ。えっへん。
だが、わたしは人間になりたいんだ。悪いかね?
にわとりでも人間でもない。
わたしに飛ぶための羽はない。わたしの羽はねえ、たかが威嚇するためにつかうだけさ。
対して役に立たない羽しかついてないわ。残念だがね。

なんで、空が飛びたいなんて言うと思うかね?
わたしの視野が狭いからだね。小さい世界しか見えないから。
つまらないんじゃ!
そもそも、わたしの視野は狭い。
視野の狭いわたしがどうして広い視野に憧れるようになったかって?

そりゃあ、わたしが人間だからだ。人間が作ってくれた小屋に入り、高い場所でも外を眺められるようになったからさ。


わたしはそうして、高い場所・広い視野に憧れるようになった。そうすれば、自分がにわとりだってことを忘れられるから。

わたしは自分がにわとりだってことを受け入れていない。
わたしが卵からかえって最初に見たものは人間だった。だからだ、悪いか?

だから、人間が来ると人間のように言葉を話そうとしてみたりした。コケっとしか鳴けなかった。
でもね、わたしは人間。にわとりではない。わたしは人間なんだ。誰がなんと言おうと人間だ。
笑いたければ笑えばいいさ。わたしは人間なんだから。



わたしは、今までのわたしを振り返る。

わたしはにわとりだが人間である。
周りのにわとりと仲良くなんてできるもんか
それもあたりまえだ。わたしは人間だんだから。

かたくななにわとりは自分が特別だと思いたかった
だって、人間だって思って頑張ってきたんですもの。
でもね、自分の姿がにわとりなのににわとりってことを受け入れたくなかった。

信じたくなかった。

だってさ、信じてしまうとね
そう言いながら、空を見上げてつぶやいたんだ。
今まで信じてきた自分がかわいそうなんだもの。
仲間もいなくてさ、いいたいことも言ったらバカにされそうでいえなくってさ
自分の気持ちに蓋をしてきたの。
だから、なおさら周りには自信を持って言葉で言えなかったし、簡単にその考えを手放すことができなかった。

どっちつかずのわたし。
すんごく悲しくて寂しかったな。
仲間がいない感じ。なんともいえないよね。

寂しさは絶望感にもなるし、
満たされない思いでいっぱいになる。
なんで自分は人間でなくてにわとりなんだ?
人間の言葉を話したい
人間のように高い広い視野でいろいろなものを見てみたい。

わたしの願望はこんなにはっきりしているのに、叶わない。
お父さんもお母さんも嫌いだ。
にわとりの自分も嫌いだ。
わたしが人間になれないのはお父さんやお母さんのせいだ!
わたしは全然悪くない!!


憧れをみて 現実を見ようとしない
できないことばかりを見て できていることを見ようとしない
ないものばかりを見て 
あるものをみていない


半分しか見えていないんじゃないか? 
それとも半分しか見たくないんじゃないか?

よぉく、目をかっぽじいて見てみな。

穴が開くほどのぞいたら何かが見えてくるから。

 きみにはどう見えるんだい?




憧れの反対側にあるもの。それは、絶望。それは、こんな時に登場するんだ。

きみは練習が面倒くさくなったり、何をやっているのか訳が分からなくなると、にわとりの自分は嫌だって叫ぶんだ。自分をそうやっていじめているとね、気持ちが和らぐんだよ。だから、自分はダメなんだと。ダメなにわとりなんだと。ダメなにわとりだからこそ、大人のにわとりらしくかっこよくコケコッコーって鳴けなくても大丈夫って勝手に思っている自分がいるんだ。にわとりではないって言ってくれているようで、安心するんだ。にわとりとして成長しなくても大丈夫って烙印をおしてくれているようで。

おかしいかな。




そして、周りのにわとりはわたしにあっちに行けと言う。出ていけと叫ばれる。
わたしは、にわとりであって人間ではないからね。
鳥の世界には人間のわたしはいらないだろうってさ。

そうだね。わたしはにわとりだもんね。きみにしたら、邪魔者でしかないわよね。
きみにしたら、うっとうしいわよね。
さようなら、人間になりたかった、わたし。


さようなら


わたしは、自分がにわとりだってことも受け入れるよ。

人間だって思いたい気持ちは大切なわたしの記憶として大切にしたいけど、そんなのを持っていても哀しいだけだよね。にわとりはやっぱりにわとりらしく、声高らかにコケッコーって叫べる、仲間がたくさんいる所に行ってみるよ。


うらら のたんぽぽ畑

うらら りかといいます。アート遊びが好きです。うららりかの世界に訪問していただきありがとうございます。 たんぽぽのように地に足を付け、春になったら、花が咲き、綿毛になっても遠くまで「思い(LOVE)」を飛ばしていけるような、そんなアート活動をしていきます。Urara No Mori というショップを作りました。

0コメント

  • 1000 / 1000